その後、二人が再び歩き始めると、今度は小さなリスが木の上から顔を覗かせた。レティアが手を伸ばすと、リスは興味深そうに近づいてきて、彼女の指先を軽く触れる。 「わぁ、可愛い! ルーシー、見て見て!」 レティアは嬉しそうに声を上げ、ルーシーも思わず微笑む。 「……まあ、リスくらいなら大丈夫ね。でも、あんまり触りすぎないでよ。噛まれるわよっ!」
「むぅ。かまれないもんっ」 レティアが頬を膨らませて不満そうに言い返した。
その後も、二人は山道でさまざまな動物たちと出会い、自然の豊かさを感じながら進んでいった。
山道を歩き続けてしばらくすると、涼しい風が頬をなで、耳にかすかに水が流れる音が届いてきた。ルーシーがふと立ち止まり、音の方向を指さした。 「……聞こえる? あっちの方に滝があるみたい。」
「わぁ、本当だ! 見に行こうよー♪」 レティアが興奮気味に声を上げ、ルーシーの手を引っ張りながら音の方へ向かう。木々の間を抜けるたびに水音が徐々に大きくなり、目の前に広がる光景に二人は息を飲んだ。
目の前には壮大な滝が流れ落ちており、太陽の光が水しぶきに反射して虹を描いている。透き通った水が滝壺に勢いよく注ぎ、辺りには涼やかな霧が立ち込めていた。岩肌には青々とした苔が生え、周囲の木々もそのしっとりとした環境で生気をたたえている。
「わぁ……きれーい……。」 レティアはその場で立ち尽くし、瞳を輝かせながら滝をじっと見つめていた。一方でルーシーは少し微笑みながら、近くの岩に腰を下ろして呟く。 「確かに、こんな場所ならずっと眺めていられそうね……。」
レティアは滝壺の近くまで駆け寄り、手を水に浸してみる。冷たさに思わず声を漏らしながら振り返った。 「すっごく冷たいよっ! ルーシーも触ってみてよーぅ♪」
「……いいわ。濡れたら寒くなるじゃない。」 そう言いながらも、レティアの楽しそうな様子に釣られ、結局ルーシーも滝壺へ近づき、水に手を浸してみた。 「……冷たい。でも、気持ちいいわね。」
二人はしばらくの間、滝壺で遊んだり、滝の音に耳を澄ませたりして過ごした。その中でレティアが突然顔を上げ、嬉しそうにルーシーに声をかける。 「ねぇ、こういう場所って冒険って感じだよね! 次はどこに行こうか考えるのも楽しみだねー♪」
ルーシーは滝の虹を見上げながら小さく笑い、「……そうね。こういう場所があるから、冒険も悪くないって思えるのよね……。」と答えた。その言葉にはどこか満足したような響きがあった。
二人は滝のそばで少し休憩を取り、持ってきた水筒の水を飲みながら話を続けた。滝の音が背景に広がる中、自然の美しさと静けさを満喫する穏やかなひと時だった。
「そろそろ先に進むわよっ」ルーシーが側においていた弓矢を掴み立ち上がった。
「えぇ……もう行くのぉ?」不満げに声を上げつつ、ルーシーに駆け寄った。
「日が暮れたら野営をする場所を探すのに苦労するし、夕食を作るのも大変なのよ」ルーシーが歩きながら教えてくれた。
「ふーん……そうなんだぁ……」先を歩くルーシーの服を掴み後をついて行く。
山道を進む中、草木に囲まれた静かな場所にたどり着いた二人。木漏れ日が揺れながら地面に模様を作り、小さな風が草をそよがせている。レティアはその場で立ち止まり、ふと周囲を見回すと目を輝かせた。
「ルーシー、見て見てーっ! 小鳥さんがたくさんいるよぅ!」 レティアが指差す先では、小さな鳥たちが木の枝に並んでさえずり合っている。それぞれの羽が太陽に照らされ、まるで宝石のように輝いて見えた。
「……本当ね。こんなに近くで見るのは久しぶりかも。」 ルーシーは一歩近づきながらも、鳥を驚かせないように静かな声で答えた。
レティアはさらに進み、草むらで花を摘んでいた。その指先には、色とりどりの小さな花々が集められ、即席で作った花冠を持ち上げた。 「見て見て! ルーシーにぴったりの花冠だよぅ♪」
「……え? わ、わたしに?」 ルーシーは少し戸惑いながらも、レティアが差し出した花冠を頭に載せた。その姿を見てレティアは手を叩いて笑い出す。 「ぴったりだよぅ! 似合ってるー♪」
「もう……なんだか子供っぽいけど、まあ……ありがとう。」 ルーシーは頬を赤く染めつつも、少し嬉しそうに花冠に手を触れた。
さらに歩を進めると、小さなリスが足元を駆け抜けていった。その素早い動きに驚いたレティアが声を上げる。 「わぁ! リスさんだよぅ! 追いかけてみてもいい?」
「ダメよ、追いかけたら怖がらせるだけよ。」 ルーシーは少し厳しい口調で答えながらも、その視線はリスが木に登る様子を優しく見守っていた。
近くの浅い小川にもたどり着き、清らかな水が石の間を流れる音が聞こえた。レティアはその小川に手を浸し、冷たい水を手のひらでそっとすくい上げた。 「冷たい……でも、すごく気持ちいいよぅ! ルーシーもやってみて!」
ルーシーはため息をつきながらも、そっと水に触れて微笑む。 「……確かに気持ちいいわね。」